日本工業規格

建築工事用シートの溶接及び溶断火花 A−1323に対する難燃性試験方法

1. 適用範囲 この規格は、建築工事用シートの溶接及び溶断火花に対する難燃性試験方法
について規定する。
備考 この規格の中で{ }をつけて示してある単に及び数値は、国際単位系(SI)によるものであって
参考として併記したものである。
2. 種類 難燃性の種類は、発生する火花の落下量に対応して表1の通り区分する。
 
種  類 難 燃 性
A 種 厚さ9ミリの火花発生用鋼板を溶断するとき、発生する火花に対し
発炎及び防火上有害な貫通孔がないこと。
B 種 厚さ4.5ミリの火花発生用鋼板を溶断するとき、発生する火花に対し
発炎及び防火上有害な貫通孔がないこと。
C 種 厚さ3.2ミリの火花発生用鋼板を溶断するとき、発生する火花に対し
発炎及び防火上有害な貫通孔がないこと。
3. 試験方法
3.1 試験体 試験体は、つぎの通りとする。
(1) 試験体の個数 試験体の個数は、3個とする
(2) 試験体の大きさ 試験体の大きさは、幅約90p、長さ約150pとする。
(3) 試験体の前処理 試験体を50± 2℃で48時間乾燥し、つぎに、JIS Z 8703(試験場所の標準状態)に
規定する標準状態(20±5度65±10%) に調整した部屋で二四時間以上養生する。なお、
明らかに乾燥の必要がないと認められるものについては、乾燥を省略することが出来る
3.2 火花発生用鋼板及びガス 火花発生用鋼板及びガスは、つぎの通りとする。
(1) 火花発生用鋼板 試験に使用する鋼板は、JIS G 3101(一般構造用圧延鋼材)規定する2種SS41都市
その寸法は幅10p、長さ60pで呼び厚さ3.2,4.5及び9.0o の 三種類とする。
なお、鋼板は、錆が発生していないものを使用する、。
(2) ガス自動切断機(以下、切断機という。)に用いるガスは、JIS K 1101(酸素)に規定する酸素及びJIS K 1902 (溶接アセチレン) に規定するアセチレンとする。
3.3 試験装置 試験装置は、付図西雌切断機、ホルダー、貫通孔判定用マットなどからなる。なお、
試験に用いる火花、切断機及び貫通孔判定用マットは、つぎの通りとする。
(1) 試験に用いる火花は。、3.2(1)に規定する常温の火花発生用鋼板を、3.3(2)で規定する切断機によって溶断するとき
発生する火花とする。
(2) 切断機は、鋼板の厚さによって速度を自由に変えることが出来、かつ均等で適切な加熱力を保持できるものとする。
(3) 貫通孔判定マットは、JIS A 9505(グラスウール保温材)に規定する保温板2号24K呼び厚さ25oの上に、
JIS P 3104(印刷用紙D)の51.8g/u に相当する紙を3.3に規定する条件で養生したものを敷いたものとする。
なお、貫通孔判定用マットの大きさは、60×90pとする。
3.4 試験 難燃性の試験は、次によって行う。
(1) 試験体を付図煮染め裾うちに谷底が水平に、かつ、しわがないように取り付ける。試験体は、火花発生用鋼板の下面から試験体の谷底までの距離が50pとなるように取り付ける。
(2) 標準切断条件は、図及び表2のとおり鋼板の厚さによって定める。
表 2
項目 A種 B種 C種
鋼板の厚さmm 9mm 4.5mm 3.2mm
切断長さmm 400 400 400
火口先穴径mm 1.0 1.0 1.0
予熱炎(白心)
の長さhmm
5.0 4.0 3.5
切断酸素長hmm 140 100 90
火口先端と鋼板間
の距離hmm
6.0 6.0 9.0
切断速度mm/min 500 650 700
酸素圧力
kgf/p2
2.5
(0.235)
2.0
(0.196)
2.0
(0.196)
アセチレンガス圧力
kgf/p2
0.25
(0.024)
0.2
(0.02)
0.2
(0.02)
注(1) 切断用酸素は、閉止時の値とする。
注(2) 切断酸素弁を全開して測定した値とする。
(3) 材料の表裏両面の性状が異なる場会には、表裏両面について試験を行う。
(4) 測定は、目視観察によって試験体からの発炎の有無及び防火上有害な貫       通孔の有無について行う。
(a) 発炎は、試験体が炎をあげて燃え始めて状態をいい、その有無を観察する。
(b) 防火上有無の判定は、試験体から抜け落ちた火花によって判定用マット紙が発炎することの有無によって行う。    
(5) 試験は、3回行い、いずれも表1に適合する場合を合格とする。
4. 結果の表示 試験結果には、つぎの事項を記載する。
(1) 材料名、その厚さ、構成断面図及び単位面積当たりの質量
(2) 難燃性の種類
(3) 発炎及び防火上有害な貫通口の有無
(4) その他、防火上重要な観察事項
引用規格 JIS A 9505 グラスウール保温材
JIS G 3101 一般構造用圧延鋼材
JIS K 1101 酸素
JIS K 1902 溶解アセチレン
JIS P 3104 印刷用紙D
JIS Z 8703 試験場所の標準状態
関連規格: JIS B 6803 溶断機用圧力調整器
JIS B 6805 溶断機用ゴムホース継手
JIS B 8241 継目なし鋼製高圧ガス容器
JIS B 8244 溶解アセチレン容器弁
JIS K 6333 酸素用ゴムホース
JIS K 6334 アセチレン用ゴムホース


JIS A 1323
建築工事用シートの溶接および溶断火花に対する難燃性試験方法
解説
1.まえがき 建築工事に伴う安全性確保のため、建築物のの外周に工事用シートが用いられている。これの品質については、工事に伴う落下物による危険防止と火災発生防止を目的とした規格がJIS A 8952(建築工事用シート)として定められている。
 この規格における火災安全の評価は、小さな失火源でシートが燃え広がり、火災へと進展しないという、外部火災の対する安全性の確保を目的としていることから、試験方法としてミクロバーナー又はメッケルバーナーを用いて資料を加熱し、残念時間、残じん時間、炭化面積等によって性能の判定を行っている。
 しかし、建築物の新築・増改築、特に内装工事における鉄骨等の溶接・溶断に伴う火花発生が原因となった火災事例が生じていることから、鉄骨工事等に用いられる工事用シートの火災安全の基準を定める必要が生じてきた。
 このようなことから、鉄骨の溶接・溶断工事の実態の調査を行い、工事用シートに対する要求性能を明らかにし、これに基づいて本試験方法を制定することとした。
U 逐条解説
1.適用範囲 この規格は、新築工事、増築工事、改造工事、解体工事等において、鋼材の溶接及び溶断の際に発生する火花によって起こる火災事故を防ぐ為に用いる工事用シートを実際に発生する溶断火花によって、難燃性を試験する方法を定めている。鉄骨工事には、溶接及び溶断工事があるが、溶断のほうが火花の発生量はるかに多いことから、溶断火花を用いて試験を行えば、溶断火花に対する安全性は、十分確保できるものと判断した。
2.種類 難燃性の種類は、溶断の火花の発生量が鋼材の板厚によって変わることから、通常用いられる鋼板の板厚に対応させてシートの難燃性をA種、B種、C種の三つのグレードに分けて定めた。A種は厚さ9mmの火花発生用鋼板を溶断するとき発生する火花で、シートが発炎することのないもので、A種に該当する物としては、アスベスト、シリカ等の無機質のものである。B種は、厚さ4.5mmの鋼板を溶断するときの火花による物で、これに該当するもので、は、ガラス繊維を基材として無機質又は耐熱性の樹脂でコーティングした物である。C種は、厚さ3.2mmの鋼板を溶断するときの火花による物で、これには、ガラス繊維に合成樹脂をコーティングしたもの該当する。
3.試験方法 試験方法としては、試験対、火花発生用鋼板、ガス、試験装置及び試験の4項目について規定した。
3.1
 試験方法の考え方
溶接・溶断工事による火災発生の確率は、これらの工事に伴う発生火花の温度・量、火花発生箇所と工事用シートとの距離、火花の貫通等の要因によって決まってくる。
 これらについてJIS A 8952を検討した結果、ミクロバーナーの熱源と溶接の火花とでは、熱源の熱的性質が基本的に異なること、JIS A 8952では着炎による火災危険を評価している為、熱を受けたときに溶融するような材料に付いて炭化面積に準じた評価をしている等、鉄骨工事に用いられる工事用シートに対する要求性能としては必ずしも十分でないことが明らかとなった。
(1)熱源
(火災発生用鋼板)
溶接・溶断工事における火花の温度は、3000℃以上といわれていることから、これをモデル化にした標準熱源を作ることは難しいこと、溶接・溶断の工事では、後者のほうが火花の発生量が多いことなどから熱源として鉄骨工事に用いられている標準的な鋼板(火落発生用鋼板)とし、これを所定の方法で溶断させ、その火花を試験対に直接落下させることとした。
(2)火花とシート
との距離
溶断工事は、工場、建築現場のいずれでも行われることから、火花発生箇所と工事用シートとの距離は一定しないが、溶断工事による器具の種類、人の行動から考えて、その距離を50cmとし、火花がたまりやすいように試験体をつるすこととした。
(3)火災危険
(防火上有害な貫通孔)
発生した火花によって材料が着炎してはならないことはもちろんであるが、溶断工事の火花という高温・微粒子材料を貫通し、材料の裏面又は下部にある可燃物に堆積した場合、これに着火する危険がある、そこで、試験体下方に置いたガラス繊維のマットの上に薄い紙を強いて、上の着火の有無によって火花の貫通による火災危険を評価することとした。
3.2 試験の実施
3.2.1 試験体 小火源によって材料を加熱する場合、材料の含水率は重要な要因となる。しかし、含水率が無視できることが明らかな材料にあっては、前処理は省略してもよい。
3.2.2  火花発生用鋼板及びガス
(1)火花発生用鋼板 火花発生用鋼板は、連続して使用すると鋼板の温度が上昇し、火花の発生量にばらつきを生ずることから、試験ごとに常温の物を用いることとした。
(2)ガス ガス自動切断機に用いるガスは、JISに定められている酸素及びアセチレンを使用する用に規定した。
3.2.3試験装置 試験装置は、風によって火花の落下の乱れ、冷却等による試験結果への影響を与えないようにはこの中に試験体を取り付けるようにし、発炎は全て目視で行う為、2面をガラス張りとした。試験装置の主要な部分は、切断機、ホルダー、貫通孔判定用マットなどからなっている。ここでは、難燃性試験に重要な、試験に用いる火花、切断機貫通孔判定用マットを規定した。
(1)火花 試験に用いる火花は、火花発生用鋼板にさびが発生していると、火花の粒径が大きくなることからJISに規定するさびが発生していない鋼板を用いることとした
(2)切断機 切断機は酸素アセチレン炎用を用いることとした、火花の発生量・速度等は、切断条件によって異なることから、本文表2に示した火花発生用鋼板の厚さに対応した条件で鋼板を切断しなければならない。このことは、均等な加熱力を保持する必要があるためであり、このためガス自動切断機を用いることを規定した。
(3)貫通孔判定用マット マットは、材料に着火しなくても、高温の火花が材料を貫通して落下し、周辺の可燃物に着火する危険があることから、断熱性が高く、不燃性があるJIS A 9505(グラスウール保温材)に規定する保温板2号20Kの呼び厚さ25mmの上に51.8g/m2の印刷紙を重ねた物とし、印刷紙の着火の有無によって防火上有害な貫通孔をしょうじたかいなかを判定する。ただし、火落の落下による紙の炭化は、有害な貫通孔とは判断しない。
3.2.4試験 試験は、試験体の取り付け、標準切断条件、試験面、判定、試験回数の5項目に分けて規定した。
 尚、試験は、付図に示した用に下方に隙間のあるガラス箱の中で行うこととするが、判定用マットの印刷紙の燃焼に影響が少ない用、室内の風の流れのない場所で試験を行う必要がある。
(1)試験体の取り付け 試験体の取り付けは、特に谷底が水平に、かつ、シートがしわにならない用にしないと落下した火花の分散状態が異なり試験結果に影響を及ぼすので注意が必要である。又、試験体を火花発生用鋼板の下面から試験体の谷底までの距離を正確に50cmとなるようにとりつけるには、試験体の弾性や厚さによってたるみが多少違うので、固定時には注意が必要である。
(2)標準切断条件 標準切断条件は、再現性とA種、B種、C種のグレード分け正しくできる用に実験を行い、各面ごとに結果を示す必要がある。
(3)試験面 シートによっては、コーティングの方法などによって、火花に対する影響が変わると予測されることから、シートの表裏両面の性状が異なる場合、両面について試験を行い、各面ごとに結果を示す必要がある。
(4)測定及び判定 測定は、目視観察によって、試験体からの発炎の有無及び防火上有害な貫通孔の有無について行うこととしたが、判定の難しさは、焦げる物、発炎すつもの、とけて穴があくものなどを、どこまでが防火上有害化を判定することであった。そこで、試験体が炎を上げて燃えた状態を発炎とし、防火上有害な貫通孔の有無については、火花が他のものに飛び火することがあってはいけないことを基準に考え、判定マットの紙が発炎するかしないかによって判定することとした。
(5)試験回数 試験回数は、他のシート類の試験方法と同じように3回とし、いずれも合格しなければならないこととした。
.結果の表示 試験結果に記載を必要とする、材料名ほか3項目を記載することとした。
.工事用シートの難燃性の試験例 本試験方法によって現在市場に供されている代表的な工事用シートについて試験を行った結果、次のような結果が得られたので参考として示す。
材料 シリカ繊維 アスベスト
シート
シリコン
コーティング
ガラス繊維
塩ビ
コーティング
ガラス繊維
難燃ポリエチレン
コーティング
ガラス繊維
塩ビ
コーティング
ナイロン
A種 9.0mm × × -
B種 4.5mm - - ×
C種 3.0mm - - - - -
◎:シート判定用マットとも発炎なし
○:シート着炎はあったが、判定用マット着炎なし
×:シート判定用マットとも着炎
△:シート着炎はないが、判定用マット着炎
注:塩ビコーティングナイロンはJIS A 8952の規定を満足する材料。